産科医が存在しない都市では・・

富士市において、昨年、中央病院において提携先の慈恵医大よりの産科医の引き揚げに伴い、産科医の医師不足による問題が大きな問題となりました。その後、浜松医大と話がつき、現在では5人の産科医が確保出来た中で存続がされています。

 しかしながら、医師不足は多くの地方自治体においては深刻な問題であり、産科医が存在しない都市においての、現状とその対策として行っている岩手県遠野市の「ねっと・ゆりかご」を視察してきました。

 遠野市は岩手県のほぼ中心部に位置し、柳田国男の「遠野物語」で知られる独自の歴史や文化を持つ自然豊かな人口3万2千人、高齢化率は33.4%と高く、出生率は1,79と低い状況でもある少子高齢化が進む小さな市でもあります。

 その遠野市において、2002年4月に岩手県遠野病院の産婦人科が閉鎖され、遠野市内で分娩できる施設が無くなってしまいました。その為に市内の妊婦は山を越え、遠くの市外の病院へ通院しなければならなくなり、市内でお産が出来ない市になってしまいました。閉鎖後5年経っても、医師の再配置がない状況に地域周産期医療システムを再デザインした中で、県と遠野市において、行政と助産師と医師が協働する体制を構築する事に取り組み、2006年に妊産婦の不安を軽減する事を目指した「遠野型助産院ネットワーク構想」が進められ、遠隔地におけるモバイル胎児心拍伝送装置を利用した遠隔妊婦健診の取り組みが始まりました。そして、2007年に公設公営のITを活用した県内初の妊婦支援施設で産科医が一人もいない医療過疎地の試みとして市営助産院「ねっと・ゆりかご」が開設されました。

 システムとしては助産院から送られてくる伝送データを市外の産科医が見ながら診察し適切な出産、入院時期などを助言します。また、双方向カメラで妊婦と顔を合わせながらの対話も可能なシステムとなっています。
「ねっと・ゆりかご」は医師不足がもたらした中で、ITを利用し、遠野市助産院が拠点となり、県内医療機関、産科開業医、緊急搬送の確立をすべく消防署との連携により成り立っていますが、理想としては、やはり常勤の産婦人科医の確保に尽きると思います。しかしこのシステムにより、医師の負担が軽減することにより医師誘致へ環境整備につながると考えられ、開業支援金と合わせた中で積極的な誘致活動は進めていくそうです。この取り組みの将来構想は、遠野市が「安産の里」の実現が出来ればと説明してくれました。
2010年には遠野物語が発刊100周年を迎えますが、伝説や昔話で語り継がれてきた河童や座敷わらしが今も存在しているかのような史跡や自然が残っています。まちの中には河童がモチーフとされたものが随所にありました。
(交番もかっぱ)(池にもかっぱ)(神社でもこま犬ではなくかっぱ)どこでも、かっぱです

心のテーマパークと言われる遠野市では子供を育てる事を望む人達に、安心して住める福祉の里としても力を入れていました。
今回視察をし感じた事は、富士市では、中央病院の産科医が確保され、開業医が存在する事は恵まれた状況であり、今後もこの体制が崩れないような医師確保は最重要課題として取り組んでいかなければならない事を痛感しました。