滋賀県東近江市の菜の花エコプロジェクトの取り組みを視察し、菜の花畑は巨大油田であり、家庭の中には台所油田がある事が、資源循環型のまちづくりを見て、よく分かりました。
今回、会派での視察で、平成18年1月1日に1市6町が合併した、現在の東近江市にいきました。東近江市は、滋賀県の南東部に位置し、中央には、愛知川が東西に流れ、琵琶湖に注いでいます。その愛知川の流域には良質な水田が広がり、県下一の穀倉地域となっています。
昭和52年に琵琶湖の水質が悪化する中で、大規模な赤潮が発生しました。原因は、合成洗剤に含まれるリンと廃食油の垂れ流しでありました。その後、昭和56年に愛東町の女性が、「消費生活学習スクール」を結成し、回収した、廃食油を粉せっけん(愛しゃぼん)にリサイクルし粉せっけんの普及を推進してきました。しかし、洗剤メーカーが「無りん合成洗剤」の販売を始める中では、粉せっけんの使用率が急速に低下しました。その一方では廃食油の回収量は増大したために、粉せっけんのリサイクルに限界が見え、廃食油の新しいリサイクルの仕組みが作り出されることが、課題となりました。
粉せっけんを製造してます。
こうした状況の中で、廃食油が車の燃料になるかもしれないと研究開発をすすめ、今ではてんぷら油で車が走るようになっています。いわゆる、バイオ・ディーゼル・フューエル(BDF)で、植物油からできたディーゼル車に使用できる燃料です。台所から出る、廃食油が燃料となり、台所が油田となります。原油高騰の中では素晴らしいことです。
リッター80円で製造ができ、今は、公用車やバス等で使用中。
BDFで動くカート。
琵琶湖の水質汚染の原因になる廃食油をリサイクルする「粉石けんづくり」が、「軽油代替燃料化」の動きにつながる中で、地域の中にあるバイオエネルギー(植物系の資源か
ら生み出されるエネルギー)にもっと注目しようというプロジェクトが生まれました。それが今回、視察した「菜の花エコプロジェクト」です。
休耕田を利用して春の風物詩の菜の花畑を甦らせ、農業振興と観光振興を図り、菜の花から生まれる食用油は学校給食など地域で利用し、その廃食油を軽油代替燃料にしようというものです。菜の花畑は「巨大油田」に替わります。
この菜の花プロジェクトの取り組みが始まり、環境教育、観光資源として多くの観光客が訪れるようになり、栽培面積も16haと広がり、収穫した菜種は搾油し、学校給食でも利用を開始しています。また、油粕は肥料として、販売され、循環過程で経済効果が生まれています。
菜の花プロジェクトは、「自立」と「自律」の地域づくりを基本にした運動です。地域の事は地域で解決することを理念に「地域発想」「地域主体」の取り組みを目指していました。
富士市にも、多くの水田があります。私の住む地域も、東部土地改良区また、浮島土地改良区と田園風景が広がっていますが、やはり、農家の人の後継者不足や、老齢化が進んでおり、休耕田や耕作放棄地があり、今後も増加していくと思われます。全国的な取り組みが進んでいる、「菜の花プロジェクト」を富士市としても、現在進めてはいるものの、浸透はしていない状況なので、本格的な取り組みとして進める価値があると思いました。