宮域林を視察する前に、外宮、新たに創設された「せんぐう館」を見学しました。
「せんぐう館」は20年に一度行われる神宮式年遷宮を通じて、広く我が国の伝統・文化を伝え、日本人の営みと精神文化の中心にある神道の継承をめざすために第62回神宮式年遷宮を期して、社殿造営・御装束神宝奉製の技術を展観し、我が国が誇る技と心の精華を永く後世に伝える理念のもと創設されています。
素晴らしい「せんぐう館」見学後、マイクロバスに乗り換え山道を30分強のところで現地説明をして頂きました。あいにくの雨となってしまいましたが、その際に言われた事は、山ヒルに注意する事。(実際に今回の視察でも山ヒルに血を吸われてしまった人がいました)
宮域林は、約2000年前、第11代垂仁天皇の御世に神域として定められ、天武天皇の代より式年遷宮制度が確立して以来、御造営用材を伐り出す「御杣山」として定められ守られてきました。材の欠乏により御杣山も他所に移ったり、江戸時代には伊勢参りの流行によって薪炭用材の乱伐が引き起こされて山が荒れた時期もあったそうです。幾つかの時代の変遷を経て、宮域林は古来神宮の境内地と管理運営されてきた由緒ある森林でもあり、今では神宮司庁営林部により管理されています。
宮域林5446haの内、約半分の面積は天然林で、風致景観、五十鈴川の水源涵養の維持、増進等の為の管理運営を行い、これ以外の人工林については公益的機能確保に配慮しつつ式年遷宮に必要な御用財の生産を目的とした施業が行われています。その為に御用財を出来るだけ短い期間で生産させる施業が行われており、将来的に残す木の選定には大樹候補木を二重ペンキ巻き表示を、その予備軍には一重ペンキ巻き表示をしていますが、これら候補木の周囲を強度に間伐する受光伐が中心となっています。200年先の森つくりが行われており、200年でヒノキhaあたり100本程度、平均胸高候補木100センチ以上、用材候補木60センチ以上が目標となっています。
また、宮域林のもたらすものとして宮域林で育林が行われる以前の五十鈴川は、氾濫を繰り返す暴れ川でした。しかし育林のすすんだ平成3年には1日に486mmの豪雨があっても洪水を起こすことはなくなりました。これは宮域林での育林が保水力の高い土壌を作り出し、貯水する力が高まったためだと考えられています。また、宮域林は神域としての景観を形作り、針広混交林として多くの動植物の生息空間になっています。
まさに「神様の森づくり」宮域林の森林施業が、「理想の森であり、究極の人工林でもある」と言われる所以が理解できました。
伊勢神宮での内宮で、お参りもさせて頂きましたが、知識も心も洗われた視察でもありました。